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落合恵子さん

(作家・クレヨンハウス主宰)

 執筆と並行して、子どもの本の専門店「クレヨンハウス」をオープンして、この春で45年目を迎えた。

 ……もっと自由に、もっと楽しく、もっと自前の価値観で「表現しよう」よ。暮らしていこう。「表現」するということは、感じること、考えること、行動することと重なる行為だ。あなたを生きることができるのは、あなたしかいない。あなたの人生だから。自分を丸ごと肯定できる社会、あなたがあなたであることを過不足なく愛することのできる社会と人間関係を創り、拓いていこうよ。大人も踏ん張るからね。約束するよ……

 そんな思いで、クレヨンハウスと名付けた。すでにあるあらゆる差別を、また将来、差別の芽となり、差別を助長するであろうことにも反対してきたのは、次のような理由からだ。
 差別をするのが人間であるなら、それを少しでもなくしていく努力をすることができるのも人間だと信じているからだ。

クレヨンハウスはもとより、わたし個人も、昨年10月から始まった「幼保無償化」から外国人学校幼稚園が除外されていることに反対してきた。もちろんまずは人権の見地から。

 これほどグローバル化が目指され、ことあるごとにその言葉を使い、(コロナウイルスの感染拡大防止のために、このところ閉ざされてはいるが)入管法を改正し、外国人の受け入れを増やす政策をすすめる国や政府が、なにゆえに、どんな理由をもって、「外国人の子どもだけ」を支援対象から外すのか。

 この国で、「非嫡出子」として生まれてきたわたしは、幼い頃からあらゆる差別に対して敏感だった。

 人が自分自身として過不足なく「自分を生きる」権利、尊厳への反逆行為としか、思えない。

 子どもは生まれてくる国や社会や、その社会の取り決めを選ぶことはできない。

 差別は差別される側だけではなく、それを許容し、自分に引き寄せて考えることを放棄したグループに属するものをも、やがては切り捨てるものだと、わたしは考える。

 少しの想像力と痛みへの共感力がありさえすれば、「除外」に反対することは人としてごく自然な行為であることがわかるはずだ。

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©神ノ川智早

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