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ここがだよ、

幼保無償化!

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保護者連絡会代表の宋恵淑さんが過去『朝鮮新報』に寄稿した3つの内容から、幼保無償化の問題点とおさえるべきポイントについて確認してみよう。

朝鮮幼稚園など各種学校の認可を得た外国人学校幼稚園が除外されたまま幼保無償化制度が実施されて半年、文部科学省は制度の対象外となった幼児教育施設に対する調査事業を開始した。そこで改めて幼保無償化からの朝鮮幼稚園除外について、その問題点や今後の運動のポイントを押さえてみたい。(『朝鮮新報』2020年4月8日付掲載)

①求めよう、朝鮮幼稚園を含む外国人学校幼稚園の子どもたちの尊厳と学びの尊重

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朝鮮学校つぶしへの認識
幼保無償化を求める運動の中で決して軽視してはならないことは、文部科学大臣、そして文部科学省や厚生労働省の担当者などが「各種学校から外れて認可外保育施設として届け出れば、保育の必要性がある家庭は幼保無償化の対象となる」などと述べていることだ。
各種学校という地位は、朝鮮学校卒業生たちが国際社会の様々な分野で、また、朝鮮学校在校生たちが都道府県の代表として各種スポーツ大会や芸術コンクールなどで活躍している実態に即して考えたとき、不十分なものである。しかし、在日一世、二世たちが「各種学校としても認可するべきではない」とする文部事務次官通達を跳ねのけて、心ある日本の皆さんとともに獲得した権利であり、それを土台に民族教育が発展してきた歴史がある。その既得権を返上し、今ある朝鮮幼稚園の形を崩すことになり、なおかつ保護者の間で適用される人/されない人が生じてしまう各種学校外しという方法は、決してとるべきではないと思う。そのような甘言につられ、各種学校を外したら、次は何を奪われ、どんな理不尽な仕打ちを受けることか。幼保無償化除外問題を、理不尽極まりない高校無償化からの朝鮮高校除外問題と軌を一にする朝鮮学校つぶしとしてしっかりと認識し、危機感を抱く必要があると強く感じている。

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学びの場の否定
幼保無償化除外の問題点は何よりも、子どもの多様な学びの場を否定し尊厳を傷つける理不尽な差別であるということだ。日本政府は幼保無償化の基本理念に「すべての子どもたちの健やかな成長を支援する」と掲げながらも、外国人学校幼稚園を幼保無償化の対象を拡大するかどうかを検討する場に呼ぶこともなく、別途ヒアリングの場を設けることもなく、各種学校であるという形式的な理由で除外した。
外国人学校幼稚園はマイノリティの子どもたちにとって、自己のルーツにつながる言葉や文化に接しながら自己肯定感をはぐくみ、健やかに成長できるかけがえのない施設である。
幼保無償化制度が真に「すべての子どもたちの健やかな成長を支援する」ものとして、また日本社会の一人ひとりの子どもの最善の利益を尊重しながら制度設計されたのであれば、外国人学校幼稚園が除外されることにはならなかったはずだ。
全国各地の朝鮮幼稚園保護者たちは口々にこう訴える。「すべての子どもと言いながら、なぜ私たちの子どもは仲間外れにされるのか」「これは尊厳の問題であり、幼い子どもたちの心に傷を負わす、差別の問題」であると。
この世に、仲間外れにされてよい子どもは一人としていない。外国人学校幼稚園も幼保無償化の対象とするよう、今後も国に対し力強く要請していきたい。

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運動の賜物、粘り強く声を
さて、こうした問題点を押さえたうえで、今後について簡単に触れたい。現状では各種学校の外国人学校幼稚園が幼保無償化の対象となるためには法改正が必要となり、ハードルは高い。ただ、悲報ばかりではない。この間の私たちの運動によって、冒頭で述べた調査事業に、各種学校も含まれることとなったのだ。
昨年夏以降、全国の朝鮮幼稚園の保護者達は幾度となく関連省庁や国会議員会館、都庁、府庁、市役所、区役所などに足を運び、国会議員や地方議員、関連省庁の担当者らに申し入れをし、集会やパレード、署名活動によって世論を喚起してきた。各地の朝鮮幼稚園ではこれまで以上に、地域との交流や公開保育を行い、高校無償化実現のために闘ってきた朝鮮高校生たちや卒業生たちをはじめとする様々な世代の同胞が、街頭宣伝や絵本の作成など、多彩な運動を繰り広げている。
日本の皆さんによる支援の輪も日に日に大きくなっている。
こうした活動が、2019年11月27日の衆議院文部科学委員会における幼保無償化に関する質疑応答のなかで、対象外施設への財政支援に「各種学校も含め検討中」であるという文科大臣の答弁を引き出し、今般の調査事業に各種学校である朝鮮幼稚園など外国人学校幼稚園も含まれることとなったのだ。運動の賜物であると言えるだろう。
その調査事業であるが、国が自治体に委託して、当該自治体下の幼児教育施設の実態や保護者の意識、今後の支援のあり方などに関して調査し、来年度以降の本格支援につなげるもので、すでに公募要領は2020年3月23日付で文科省から発表されている。ただし、調査事業の対象となる施設は自治体によってなんらかの支援があるものに限られており、この調査事業からも漏れてしまう施設があるという問題点がある。さらに、国が自治体に判断を丸投げし、自治体は国に忖度するという責任の押しつけ合いの果てに、結局のところ、朝鮮幼稚園が調査対象に含まれない危険性があることも十分注意したい。
そのような事態を回避するため、文科省に対して、調査事業には各種学校も対象に含まれることを記した通知を自治体に発出するなどの措置を講じるよう、引き続き粘り強く申し入れしていく必要がある。そして自治体に対しては、朝鮮幼稚園をはじめとする外国人学校幼稚園を調査対象施設として認識し、国に対して声をあげるよう、しっかりと要請したい。同時に、朝鮮学校・幼稚園が地域にとっていかにニーズがあるのか、保護者や日本の支援者たちの声もきちんと反映していきたい。各地の朝鮮幼稚園と保護者の取り組みについては、今後朝鮮新報で紹介していければと思う。
さいたま市による「マスク不配布問題」からもみられるように、幼保無償化からの外国人学校幼稚園除外の方針を国がいったん出してしまったことによって、外国人学校幼稚園の子どもたちは除外してもよい、仲間外れにしてもよいという誤ったメッセージが社会に漂ってしまっている現状に、保護者としては大変悲しく悔しい思いでいっぱいだ。幼保無償化適用実現のための運動は、すべての子どもたちが仲間外れにされることなく、平等に尊重されるよう求める運動であるという揺るぎない信念を持って、引き続き声をあげていきたい。

②朝鮮幼稚園を守るために、いま一度奮起を!(『朝鮮新報』2020年6月29日付掲載)

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除外から8カ月
2020年6月、幼保無償化制度から朝鮮幼稚園をはじめとする各種学校の外国人学校が除外され8カ月が過ぎ、新しい年度を迎えた。いうまでもなく、幼保無償化除外問題は高校無償化除外問題と同じく、単にお金の問題ではない。「すべての子どもたちの健やかな成長を支援する」という理念を掲げた制度から、子どもたちが理不尽にも仲間外れにされ、傷つけられているという、尊厳にかかわる問題だ。また、子どもたちの多種多様な学びの場が否定されているという、学ぶ権利にかかわる問題でもある。ただ、現実として保護者たちには幼保無償化制度と同時にスタートした消費税増税による家計の負担増の痛みが重くのしかかっているのも事実である。
朝鮮幼稚園にとっても増税の影響は甚大だ。朝鮮幼稚園では、園児たちの転倒防止のためコード類を固定したり、角に誤ってぶつかっても大事にいたらないよう緩衝材を巻き付けたりといった安全性確保のための対策を十分に施しているが、そうした資材なども当然、増税の影響を受けている。そこに新型コロナウイルス感染拡大による影響が加わった。収入の減少や失職といった深刻な状況に陥っている保護者も少なくない。幼稚園運営の一助となるイベントの開催も難しい状況だ。幼保無償化から除外され心が傷つけられたばかりか、未来への不安が募る毎日。しかし、見渡してみると、前向きな兆しもあるのだ。

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粘り強い運動の賜物
幼保無償化からの朝鮮幼稚園除外に対し、日本の国内外から多くの批判が集まっており、2019年12月から始められた幼保無償化適用を求める署名は、短期間で延べ46万を超える賛同署名が集まった(2020年5月末時点)。
また、幼保無償化施行後、これまで支給してこなかった朝鮮幼稚園の保護者に対する支援策を模索し、実際に補助金などの支給を新たに開始した自治体も複数出てきている。
さらに、日本政府が幼保無償化対象外施設に対し、来年度以降支援策を講じるために今年度行う自治体委託型の「調査事業」に対する公募が20年5月までに行われたが、自治体が国に「忖度」して朝鮮幼稚園を「調査対象」としてみなさないのではないかという私たちの不安や懸念に反し、朝鮮幼稚園の園児が居住する18の自治体が朝鮮幼稚園を「調査事業」の対象とし、公募に手をあげたのだ。自治体にとって、「調査事業」への手上げは義務ではない。しかもこのコロナ禍、手上げは自治体にとってさらに「仕事が増える」ことにつながる。にもかかわらず、18もの自治体が手上げしたのは、私たちの粘り強い運動の賜物であると同時に、幼保無償化からの朝鮮幼稚園除外がいかに不当で理不尽な問題であるのかということの証左だと感じている。

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他の施設のお手本にも
コロナ禍の中での自粛期間、朝鮮幼稚園では全国にひろがるネットワークという強みを活かし、遊びにも行けず友だちにも会えず寂しい思いをしている園児たちのために、各地の朝鮮幼稚園の先生たちが出演する手遊び歌や体操の動画の数々を配信してくれた。各地の先生たちの楽しい歌や見事な演技、ウリマルに、子どもたちはもちろん、保護者も元気づけられた。朝鮮幼稚園のありがたさを改めて感じ、日本にあるほかの幼児教育施設のお手本にもなる朝鮮幼稚園の活動をより多くの人たちに知らせていきたいと思った。そのためにも、不安ばかりにとらわれず前をむいて、幼保無償化の適用を求める運動をよりいっそう盛り上げていきたいと思っている。
未来は創り出せる。子どもたちの明るい未来のために、いま一度奮起を!

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③〈Q&A〉幼保無償化「調査事業」とは? 今後の幼保無償化運動は?(『朝鮮新報』2020年6月29日付掲載)

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「調査事業」とは一体なんですか?

正式名称は、「地域における小学校就学前の子どもを対象とした多様な集団活動等への支援の在り方に関する調査事業」です。19年10月から始まった幼保無償化制度ですが、朝鮮幼稚園をはじめとする各種学校の認可を得た外国人学校幼稚園は名指しで適用対象施設から除外され、また、幼稚園類似施設なども適用が見送られました。こうした政府の差別に対し、保護者や施設などの当事者を中心として、多くの批判の声があがりました。それを受け、政府は昨年夏の時点で、対象外となった施設に通う子どもたちに対しても今後「なんらかの支援」を行うことを検討すると表明していました。その「なんらかの支援」の具体的な中身や対象を定めるために、今年度文科省が主導して行うのが今回の「調査事業」なのです。

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では実際にどんな調査を、

だれが行うのですか?

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「調査事業」をするのは、国に「調査事業」を委託された、つまり任された、幼保無償化の対象外となった施設に子どもを通わせている保護者が住んでいる自治体です。調査する事柄はいくつかありますが、▼保護者がなぜ認可施設ではなく外国人学校幼稚園や幼稚園類似施設に子どもを通わせているのかといった意識調査、▼当該施設が安全面で最低限の基準をクリアしているかどうかの調査、▼施設の開所期間や開所時間も含めて、施設でどのような活動を行っているのかといった活動内容や取り組みの把握などといったものがあります。

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幼保無償化は国の制度なのに、どうして制度の対象外となった施設に対する「調査事業」を自治体がするのですか?

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文科省などによると、幼保無償化の対象となっていない施設については、法令上の定めや基準などがなく、多種多様なものが存在していますが、各地域に、地域や保護者のニ―ズに応え重要な役割を果たしているものもあるため、地域にとって重要な役割を果たす施設への効果的な支援の在り方を明らかにするための事業として、「調査事業」を開始することとなりました(萩生田文部科学大臣会見などから)。端的にいうならば、幼児教育類似施設にはさまざまなものがあり、国がそのすべてを把握しきれていないため、類似施設やその施設に子どもを送る保護者により近い存在である地方自治体に国が調査を任せることになったのです。

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それって、国が「調査事業」に関わる判断を、自治体に丸投げしたってことですか

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そう言えますね。政府は「調査事業」の要領を20年3月23日付で自治体に送ったのですが、自治体に対し「調査事業」を引き受けるのであれば、「調査事業」を実施する計画書など作成し、5月22日までに国に必要書類を提出するよう求めました。要は、「調査事業」を引き受けますよと「手上げ」するかしないかは、自治体が判断することになっているのです。そのため、実際には今回の「調査事業」の対象には各種学校の認可を得た外国人学校幼稚園も含まれているのですが、いったん国が外国人学校幼稚園は幼保無償化の対象とはならないという方針を出してしまったため、今回の「調査事業」の対象にもならないと判断してしまった自治体があったり、文科省に問い合わせまでして各種学校の外国人学校幼稚園も対象であると確認しながらも手上げしない判断をした自治体もありました。ましてやこのコロナ禍の中で、自治体もさまざまな対応に追われ、「調査事業」の公募要領を精査していなかったり、「調査事業」への手上げを躊躇したり、さらには要綱が届いたことも認識していなかったりして、「調査事業」への手上げに間に合わなかった自治体もありました。こうして自治体に判断をゆだねたことで、国は自治体に責任を転嫁したといえるでしょう。

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では、自治体が判断すれば、どの幼児教育類似施設でも「調査事業」の対象になるのですか?

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なれない場合、つまり、最初からはじかれてしまっている場合があります。というのは、「調査事業」のそもそもの対象施設としての前提条件に、現在自治体がなんらかの金銭的支援を行っていることがつけられているからです。つまり、現在自治体から幼児教育類似施設に対し、保護者補助金などのなんらかの支援があるかないかで、「調査事業」の対象となるかならないか、線引きされてしまうということです。すなわち、「高校無償化」除外という国の差別に連動する形で朝鮮学校・幼稚園に対する補助金を停止する自治体が続出しているなか、同じ朝鮮幼稚園の園児であっても、自治体からの補助金の有無によって「調査事業」の対象となる、ならないの線引きがなされてしまったということなのです。

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結局、朝鮮幼稚園に通う園児が居住する自治体で「調査事業」に手上げした自治体はあったのでしょうか?

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はい、18の自治体が手上げしました。国が自治体に判断を丸投げしたため、自治体が国に「忖度」し、手上げしない判断を下してしまうのではないかと懸念していましたが、結果的には私たちが予想したよりもはるかに多くの自治体が手上げしました。これは、保護者を中心とした朝鮮幼稚園の当事者らによるたゆみない運動の成果であると感じています。と同時に、実際にこの運動に携わってきたものとしては、幼い子どもたちまでをも理不尽に適用除外した「幼保無償化」問題に対し、日本の支援者の皆さんのみならず、国会議員や地方議員、そして各自治体の子育て支援や幼児教育・保育の担当者らのなかにもおかしい、なんとかしたいと思っている人が多数いるのだと、改めて感じました。

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多数の自治体が手をあげたということですが、今後の「調査事業」のスケジュ―ルはどうなっていますか

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「調査事業」の公募は20年5月22日に締め切られましたが、朝鮮幼稚園を対象施設として手上げした自治他を含むすべての手上げした自治体のうち、実際にどの自治体に「調査事業」を任せるのか、5月下旬~6月中旬に文科省に設置された「審査委員会」が書類審査を実施し、6月下旬からその審査結果を手上げしたすべての自治体に通知するとしています。採択される自治体数は、今回の「調査事業」の予算である1億9200万円の範囲内で審査委員会が決定することになっています。もうまもなく、結果がわかるという段階にきています。

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今後、「調査事業」を含めて、幼保無償化の運動をどのように展開していけばいいのでしょうか

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現在、朝鮮幼稚園としては、文科省などに対し「審査委員会」において「調査事業」からの理不尽な「朝鮮幼稚園はずし」が起きないよう、適正な審査を求めているところです。審査委員会の結果、朝鮮幼稚園に通う子どもが居住する自治体が「調査事業」委託先に選ばれたら、来年度からの本格的な支援策を形作るなかですべての朝鮮幼稚園をその対象とさせるべく、朝鮮幼稚園を一つのネットワ―クとして類型化して支援策を検討するよう求めていくことが大事だと思います。また、現在朝鮮幼稚園に対し補助金が支給されていない、あるいは、かつてはあったものの支給が停止されてしまった自治体に関しては、補助金拡充や復活を求める運動を展開していくことが重要です。また何よりも、朝鮮にル―ツをもつ子どもたちが自己のアイデンティティーをすこやかに育める朝鮮幼稚園という格別な学びの場を尊重するよう、日本社会に署名活動などを通して幅広く世論喚起すること、そして朝鮮幼稚園をはじめとする各種学校の外国人学校幼稚園を幼保無償化制度自体の対象とするべく、日本政府に対し、粘り強く法改正を求めていかなくてはならないと思います。

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