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古今亭菊千代さん

(落語家)

 初めてピースボートで訪朝したのは2000年。当時の両国間の関係は決してよくなかったが、平和交流という名のもとに、滞在中の最後の夜にはたくさんの方々とフォークダンスを踊った。01年には落語を朝鮮語で披露し、翌年の訪朝でも落語を披露。それから情勢が変わり、ピースボートでは朝鮮に行けなくなってしまった。それでも16人で訪朝団を結成した06年には、外国語大学日本語学科の学生たちの前で、日本語で落語をやらせてもらえた。
 会いたいと思っても簡単には会えない人たち。だからこそ再会が本当に嬉しく、別れがとても悲しくなる。やっと叶った昨年8月の5回目の訪朝では、日朝関係の悪化を実感せずにはいられなかった。あとで聞いた話だが、当時は日本人団体の受け入れが少なく、お世話になった対文協の担当者もプログラムを組むのが大変だったようだ。
 当時、朝鮮の新聞には、「幼保無償化制度から外国人学校幼稚園が除外」という記事が載っていた。滞在時に見学した製糸工場では、そこで働く女性たちとの懇談会を設けてもらった。まず質問を受けたのが幼保無償化問題。それについて訪朝団の23人全員が、まったく遺憾、恥ずかしい、何とか阻止して無償化の対象になるよう運動したいと答えた。
 日本に住み、日本人と同じように税金を払いながら、日本の未来を支えていく小さな子どもたち、その家族をなぜ差別するのか、まったく理解できない。帰国後、すぐに100万人署名運動に賛同させてもらった。
 入国管理局施設の収容者に対する人権侵害の話を聞くにつれ、怒りがこみ上げてくる。外国人を招き入れ、都合が悪くなったら排除しようとする。外国で自分が、自分の知り合いが同じ目にあったら。そう考える役人はいないのか。
 一昨年、北京の日本人学校で落語を披露した。子供たちはおなかを抱えて笑ってくれた。様々な国で、日本の、日系の子供たちが生活し、遊び、学んでいる。その子供たちを守るためにも、日本は、日本に住むすべての子供と親の生活を守るべきだ。
 今度訪朝した時にまた外国語大学で落語を披露できればと、対文協の担当者にお願いしたら、今では日本語学科で学ぶ学生が少ないから難しいかもしれないと言われた。日本は、魅力のない国になってしまったのだ。
 今こそアジアの民族が手をつなぎ、世界中の人々にお手本を見せるときだと思う。落語では、お年寄りに敬意を払い、子供たちをみんなで見守り、そして向こう三軒両隣助け合って暮らしている。そんな人情に厚い点が日本の良いところ。人情という言葉を知らない政治界のトップには早く辞めてもらい、コロナ時代幕開きの今だからこそ、温かい国づくりをしていくべきだ。

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