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宮川泰彦さん

(弁護士・日朝協会会長)

 「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」。これは日本国憲法の3大原則だ。これに則り、主権者である「国民」一人ひとり、個人の幸せを最大限に尊重するため、行政があり、司法がある。
 このような観点から考えた場合、あらゆる権利の主体はもちろん、この国に住むすべての人。そしてこの「すべての人」は、選り好みされるものであってはならない。これは、さまざまな問題を考える上でのベースだと言える。
 幼保無償化制度の主人公は、本来ならば日本に住む「すべての子どもたち」である。ところが今回、各種学校認可の外国人学校幼児教育・保育施設に通う子どもたちだけがその対象から外された。
 なぜ外したのか、その合理的な根拠があるわけでもない。
 政府の言い分は、各種学校認可の外国人学校幼児教育・保育施設は「多種多様な教育を行っており、また、児童福祉法上、認可外保育施設にも該当しない」などということだが、この発想、変だと思わないか? 私は非常に危険を感じている。
 幼稚園から大学まで、子どもたちは自由に育てられ、自由に学ばなければいけない。
 「多種多様」「個性的」「世間一般からすれば少数者」だから制度の対象から除外するというのは、排外主義の論理と同様だ。しかも、学校の教育においてまで多様性や個性を否定するのは、上からの一律的な指導によって教育の自由を奪うことであり、子どもたちの自主的な成長を妨げ、上の言いなりにさせることにつながる。非常に恐ろしいことである。どうかこれが、私のひねくれた見方であってほしい。
 幼保無償化問題は、高校無償化問題の延長で、その本質には朝鮮学校に対する偏見があるだろう。
 何より今、過去の日本による侵略の歴史を知らない世代が多くなっている。だから、在日の人びとについて何も知らない。それに「過去のことをいつまでも言っても仕方ない」「過去に対して謝り続けるなんて恥ずかしい」という意見もあるようだ。恥ずかしい過去を顧みないことこそが恥ずかしいといえる。
 今の状況を変えるために必要なことは、なぜ在日の人びとが日本にいるのか、なぜ民族教育が必要なのかを、当事者だけでなく支援者たちが日本の多くの人に伝えていくことだ。
 100万人署名運動は、このような問題を知らせていくための大事な手段である。日朝協会でも各地で繰り広げているし、もちろん私も集めている。
 在日の皆さんは同じ社会に住んでいる仲間。皆さんの権利を一緒に守っていきたい。

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